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2013年01月24日
[薬局新聞]「離島の購入弱者」引き合いにしたネット業者の言い分に憤り
薬局新聞連載の「ソーシャルPメンター&ニュース」第31回です。まだまだ流動的な情勢ではありますが、引き続き注目したいと思います。
引き続き、あい調剤薬局南町店の田中秀和先生にお話をお伺いします。
医薬品ネット販売に対する最高裁の判決が出されましたが、五島列島という「離島」にお住まいの田中先生としては、どのように受け止めていらっしゃいますか?
「『あ〜、大丈夫かなぁ』というのが本音です。ネット販売業者の言い分の変遷としては、当初間違いなく「離島住民などの購入弱者が困る」という主張があり、離島に住んだことのない(離島の実情を知らない)都市部の消費者の同情を集めていました。その部分において、非常に困惑したのと同時に、憤りを感じ、離島の現状を調査し、論文としてまとめた経緯もあります。日本薬剤師会をはじめ、行政や前政権与党である民主党本部などにも提出しておりますが、未だに「離島住民はネットがないと医薬品の購入に困っている」と声高らかに発する議員がいるような状況です。」
言葉は悪いかもしれませんが、医薬品のネット販売推進派に「離島」を利用されたというわけですね。
「我々の論文が影響したのかどうかは分かりませんが、ネット販売業者の主張からこの件が影を潜め、その後は経営を圧迫する事によって生じる不利益が争点になりました。判決も確かに、法律に明示されていない内容を省令によって規制し、一部の企業だけが不利益を被るのは法律違反という話でした。しかし、これは医薬品をネット販売する上で生じるであろう国民の健康上の不利益は全く考慮されていません。今回の判決、「省令ではなく法律でちゃんと明確に規定・規制しなさい」という風にとれると考えてよいのではないでしょうか。」
ネット販売業者が声高に主張する利便性についても、心配な部分は少なくありませんね。
「登録販売者の不正受験問題など、薬業界のシステムが未だ先の改正に追いついていない状況もあり、損得をターゲットにして勝訴したネット販売業者自らが提案する「安全な医薬品提供体制」が本当に安全なのかも検証されていないまま緩和されるのは、やはり不安を覚えます。」
次回は、医薬品ネット販売に対して、田中先生からご提言をいただきます。
長崎県五島市という離島のみで構成される自治体にて行った調査結果では、全島で光回線を利用可能で、一部の市街地を除き行政負担で各家庭まで光回線が届く状態のなか、次のような結果を得た。
【一次離島:長崎や福岡と直接の物流・交通が在る比較的大きな離島(論文1より)】
●インターネット使用者の割合:42.7%
●この42.7%の回答者のうち、78.0%が一般用医薬品以外の物品をインターネットで購入した経験を持つ
●同42.7%のうち、インターネットで一般用医薬品を購入した経験があったのは、1.1%であった
【二次離島:一次離島を介しての物流・交通しかない、離島の中の離島(論文3より)】
●インターネット使用者の割合:7.5%
●この7.5%の回答者のうち、インターネットで一般用医薬品を購入した経験があったのは10.5%、当調査における二次離島全回答者の0.8%であった
▽ 基礎からわかる服薬指導
引き続き、あい調剤薬局南町店の田中秀和先生にお話をお伺いします。
医薬品ネット販売に対する最高裁の判決が出されましたが、五島列島という「離島」にお住まいの田中先生としては、どのように受け止めていらっしゃいますか?
「『あ〜、大丈夫かなぁ』というのが本音です。ネット販売業者の言い分の変遷としては、当初間違いなく「離島住民などの購入弱者が困る」という主張があり、離島に住んだことのない(離島の実情を知らない)都市部の消費者の同情を集めていました。その部分において、非常に困惑したのと同時に、憤りを感じ、離島の現状を調査し、論文としてまとめた経緯もあります。日本薬剤師会をはじめ、行政や前政権与党である民主党本部などにも提出しておりますが、未だに「離島住民はネットがないと医薬品の購入に困っている」と声高らかに発する議員がいるような状況です。」
言葉は悪いかもしれませんが、医薬品のネット販売推進派に「離島」を利用されたというわけですね。
「我々の論文が影響したのかどうかは分かりませんが、ネット販売業者の主張からこの件が影を潜め、その後は経営を圧迫する事によって生じる不利益が争点になりました。判決も確かに、法律に明示されていない内容を省令によって規制し、一部の企業だけが不利益を被るのは法律違反という話でした。しかし、これは医薬品をネット販売する上で生じるであろう国民の健康上の不利益は全く考慮されていません。今回の判決、「省令ではなく法律でちゃんと明確に規定・規制しなさい」という風にとれると考えてよいのではないでしょうか。」
ネット販売業者が声高に主張する利便性についても、心配な部分は少なくありませんね。
「登録販売者の不正受験問題など、薬業界のシステムが未だ先の改正に追いついていない状況もあり、損得をターゲットにして勝訴したネット販売業者自らが提案する「安全な医薬品提供体制」が本当に安全なのかも検証されていないまま緩和されるのは、やはり不安を覚えます。」
次回は、医薬品ネット販売に対して、田中先生からご提言をいただきます。
長崎県五島市という離島のみで構成される自治体にて行った調査結果では、全島で光回線を利用可能で、一部の市街地を除き行政負担で各家庭まで光回線が届く状態のなか、次のような結果を得た。
【一次離島:長崎や福岡と直接の物流・交通が在る比較的大きな離島(論文1より)】
●インターネット使用者の割合:42.7%
●この42.7%の回答者のうち、78.0%が一般用医薬品以外の物品をインターネットで購入した経験を持つ
●同42.7%のうち、インターネットで一般用医薬品を購入した経験があったのは、1.1%であった
【二次離島:一次離島を介しての物流・交通しかない、離島の中の離島(論文3より)】
●インターネット使用者の割合:7.5%
●この7.5%の回答者のうち、インターネットで一般用医薬品を購入した経験があったのは10.5%、当調査における二次離島全回答者の0.8%であった
▽ 基礎からわかる服薬指導

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論文1
離島における一般用医薬品のインターネット購入に関する意識調査
-インターネットを使用する居住者を対象として-
(薬学雑誌 131(5),783-799 (2011))
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/131/5/131_5_783/_article/-char/ja/
論文3
離島における一般用医薬品使用実態・ニーズ調査と医薬品供給・管理・適正使用推進への提案
(公益財団法人 一般用医薬品セルフメディケーション振興財団 平成23年度の調査研究報告書)
http://www.otc-spf.jp/symposium/pdf/h23b_08.pdf
過去に記事を書かせて頂いていますので興味があったら訪問して下さい。
離島における一般用医薬品の入手状況調査から考える
(アポネットR研究会 最近の話題 2011.05.01)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/110501.html
過疎地における薬剤師の役割は何か?
(アポネットR研究会 最近の話題 2012.06.29)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/120626.html
薬剤師の説明って?
何もかもがなし崩しになっているような気がします。
情報提供、リンクありがとうございます。さすが情報お早いですね。
>ゆり様
コメントありがとうございます。医薬品は安売りする物ではない、というのが個人的な持論なのですが、第1類も値引き合戦ですか…。残念ですね。