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2013年04月04日
[薬局新聞]春季特集号スペシャル!お薬手帳座談会
薬局新聞連載の「ソーシャルPメンター&ニュース」第39回です。今回はスペシャル号、特別拡大版です。
今回は春のスペシャルとして、各方面の薬剤師から大きな反響を呼んでいる『お薬手帳カレンダー』の作成に関わったFacebook・お薬手帳普及委員会から3名の先生方にご登場いただき、改めてお薬手帳について語っていただきました。
「お薬手帳の意味」
田中 お薬手帳の情報って『○○発△△行き』よりは山手線みたいな環状線ですよね。A病院に行ってB薬局で薬を貰って、週に一度来てくれるヘルパーや訪看さんに見て貰って、またA病院に行ってB薬局に行って薬を貰って、風邪を引いたからCクリニックに行って・・・またA病院。でも、経時的な変化も追えるように蓄積されたものであるから、平面の環状ではなくて螺旋階段?
原崎 薬局から最終的に何を渡したかという情報は必要かもしれませんが、手帳への情報というのは必ずしも薬局発のものでなくてもいいのかもしれないですね。
若林 病院薬剤師の場合、入院患者への薬学的管理・薬剤管理が必要となってきます。お薬手帳は退院時に渡すことが多く、入院前からお薬手帳を持っていれば、そこに追記し、持っていなければ新たにお薬手帳を作成するようになります。また、医師にも外来診察時にお薬手帳を確認するようにお願いしています。後発品への変更も多いので、医師もお薬手帳の必要性に気付いてきているのではないでしょうか。
「いずれ電子化も進められそうです」
田中 アナログの良さというのもあります。上からマーカーを引いたり、チェックや追加コメントなど記入することも多い。一方で、手帳を忘れてくれば当然ですが確認も更新も出来ません。もちろん、携帯性に優れていることもありますが、せっかく電子化するのであれば、より有意義に使いたいですよね。
原崎 電子化の問題点はデバイスがないと見れないこと。優位点はセキュリティとデータの信用性ですね。一方、紙の問題点はセキュリティが甘く、データの信用性が微妙なとこで優位点はデバイスがなくても読めること。うまくいいとこ取りができればいいのですが。
田中 各地で電子媒体のお薬手帳システム(あるいは地域見守り型のシステム)が稼働しているようですが、全ての国民にこのシステムが行き渡るまでにはまだまだ時間がかかると思います。暫くはアナログとデジタルのハイブリッドが推奨される状況ではないでしょうか。夢は一刻も早く「どこでもMy病院」構想が全国展開されること。それまではアナログな手帳を使って、患者さんの避けうる不利益を可能な限り排除することが肝要と思います。
「『お薬手帳カレンダー』について」
若林 デザイン&薬剤機器メーカー・(株)ソルブの秋枝さんによる構想が元です。カレンダーの3―4月にある「愛のおくすり手帳劇場」編の原案を見て、私もひらめいたものがあったので考えてみました。私が作ったのは7―8月の冒険編と、11―12月のよくしゃべる子供編です。
冒険編に登場する娘と祖父と祖母は写真から作った似顔絵です。私の娘は話の通り喘息もちで、よく夜にぜーぜーやってます。普段かかっているクリニックもあるのですが、休日診療所に行ったときに、お薬手帳が役立ったことがありました。その経験から、あのようなマンガになりました
田中 若林先生と私で知人・友人に紹介したのですが、反響は凄かったです。個人で欲しい人はもとより、勤務先でまとめて購入し患者さんへ配布した病院・薬局もありました。販売期間3か月で発行部数が約8000部だということです。購入者は病院と薬局でほぼ半々でしょうか。病院で3000部購入された先生もおられました。
若林 私も200部くらい購入しました。知り合いという知り合いに、カレンダーを送りました。医師も看護師も、もちろん薬剤師も、一般の方も、あと、雑誌関係の方なんかにも配布しています。
田中 あのカレンダーは、薬剤師ではない方が採算度外視で付き合ってくれたからこそ出来たものです。分かってくれる人もちゃんといるというのが目に見えるのは、非常に嬉しいことですよね。
「震災を経たお薬手帳への強い思い」
田中 お薬手帳のことを考える上で、2年前の東日本大震災は非常に大きな出来事だと感じています。お薬手帳がなかったために大事な薬が貰えなかったという複数の被災者の発言を見聞きし、薬が飲めない中でよくぞ無事でいられたと思う一方、逆に手帳が無かったために不幸にも命を落としてしまった人もいたのではないかと考えると、とても他人事ではいられなくなりました。
また、被災地支援を行った薬剤師の中には、お薬手帳の普及に尽力している姿も見聞きしましたので、お薬手帳の大事さ、持っていない場合に被るであろう不利益について深く考える機会が増え、自分が担当している患者さんに、こういった不利益は決して経験して欲しくない、とも強く思うようになりました。
12年の調剤報酬改定で薬学管理料の算定要件として必須となり、お薬手帳の携帯率向上に拍車がかかることを大変喜びました。現在、説明時の話法として非難も上がっていますが、「法律」の後ろ盾があると患者さんの受け取り方が変わってきます。いかに役立ち、いかに大事な物かを重ねて説明しても、「面倒くさい」と言われたら今まではそれまででしたが、無理強いしてでも持って頂き、地震などいざという時に不利益を被る事がなければ最悪の事態は防げます。
震災のたびに見直されてきたお薬手帳の大事さですが、薬剤師としてこれらを正しく伝え続ける事で、震災を風化させないための役割を一部担えるのではないかと考えています。
12年の調剤報酬改定以降、お薬手帳は薬局にとって最重要項目の1つであり、力を入れて取り組んできた経緯があります。一部批判の声もないわけではありませんが、より活用することで患者さんの薬物治療に一層貢献できるはずです。そのためにも多くの知恵、様々な工夫を共有してゆくことが必要ではないのかな、と感じました。
今回ご協力いただいた先生方
田中秀和氏(長崎県 あい調剤薬局)
薬局にお薬手帳持参率ボードを掲示し、手帳持参を啓発
原崎大作氏(鹿児島県 アクア薬局)
数年前からお薬手帳の持参率向上を目指して、独自に手帳カバーを作成・印刷
若林進氏(東京都 杏林大学医学部付属病院薬剤部)
自らの実体験を元にお薬手帳カレンダー作成に携わる
○ Facebook「お薬手帳普及委員会」(2011年12月〜)
薬剤師のみならず、医師・看護師などの医療人、デザイン&薬剤機器メーカー、医療メディアなど、医療に携わる様々な業種の人が参加して様々な意見が交わされ、「お薬手帳啓蒙リーフレット」「お薬手帳カレンダー」など手帳普及のために多くの活動を行っている
▽ 違いがわかる!同種・同効薬
今回は春のスペシャルとして、各方面の薬剤師から大きな反響を呼んでいる『お薬手帳カレンダー』の作成に関わったFacebook・お薬手帳普及委員会から3名の先生方にご登場いただき、改めてお薬手帳について語っていただきました。
「お薬手帳の意味」
田中 お薬手帳の情報って『○○発△△行き』よりは山手線みたいな環状線ですよね。A病院に行ってB薬局で薬を貰って、週に一度来てくれるヘルパーや訪看さんに見て貰って、またA病院に行ってB薬局に行って薬を貰って、風邪を引いたからCクリニックに行って・・・またA病院。でも、経時的な変化も追えるように蓄積されたものであるから、平面の環状ではなくて螺旋階段?
原崎 薬局から最終的に何を渡したかという情報は必要かもしれませんが、手帳への情報というのは必ずしも薬局発のものでなくてもいいのかもしれないですね。
若林 病院薬剤師の場合、入院患者への薬学的管理・薬剤管理が必要となってきます。お薬手帳は退院時に渡すことが多く、入院前からお薬手帳を持っていれば、そこに追記し、持っていなければ新たにお薬手帳を作成するようになります。また、医師にも外来診察時にお薬手帳を確認するようにお願いしています。後発品への変更も多いので、医師もお薬手帳の必要性に気付いてきているのではないでしょうか。
「いずれ電子化も進められそうです」
田中 アナログの良さというのもあります。上からマーカーを引いたり、チェックや追加コメントなど記入することも多い。一方で、手帳を忘れてくれば当然ですが確認も更新も出来ません。もちろん、携帯性に優れていることもありますが、せっかく電子化するのであれば、より有意義に使いたいですよね。
原崎 電子化の問題点はデバイスがないと見れないこと。優位点はセキュリティとデータの信用性ですね。一方、紙の問題点はセキュリティが甘く、データの信用性が微妙なとこで優位点はデバイスがなくても読めること。うまくいいとこ取りができればいいのですが。
田中 各地で電子媒体のお薬手帳システム(あるいは地域見守り型のシステム)が稼働しているようですが、全ての国民にこのシステムが行き渡るまでにはまだまだ時間がかかると思います。暫くはアナログとデジタルのハイブリッドが推奨される状況ではないでしょうか。夢は一刻も早く「どこでもMy病院」構想が全国展開されること。それまではアナログな手帳を使って、患者さんの避けうる不利益を可能な限り排除することが肝要と思います。
「『お薬手帳カレンダー』について」
若林 デザイン&薬剤機器メーカー・(株)ソルブの秋枝さんによる構想が元です。カレンダーの3―4月にある「愛のおくすり手帳劇場」編の原案を見て、私もひらめいたものがあったので考えてみました。私が作ったのは7―8月の冒険編と、11―12月のよくしゃべる子供編です。
冒険編に登場する娘と祖父と祖母は写真から作った似顔絵です。私の娘は話の通り喘息もちで、よく夜にぜーぜーやってます。普段かかっているクリニックもあるのですが、休日診療所に行ったときに、お薬手帳が役立ったことがありました。その経験から、あのようなマンガになりました
田中 若林先生と私で知人・友人に紹介したのですが、反響は凄かったです。個人で欲しい人はもとより、勤務先でまとめて購入し患者さんへ配布した病院・薬局もありました。販売期間3か月で発行部数が約8000部だということです。購入者は病院と薬局でほぼ半々でしょうか。病院で3000部購入された先生もおられました。
若林 私も200部くらい購入しました。知り合いという知り合いに、カレンダーを送りました。医師も看護師も、もちろん薬剤師も、一般の方も、あと、雑誌関係の方なんかにも配布しています。
田中 あのカレンダーは、薬剤師ではない方が採算度外視で付き合ってくれたからこそ出来たものです。分かってくれる人もちゃんといるというのが目に見えるのは、非常に嬉しいことですよね。
「震災を経たお薬手帳への強い思い」
田中 お薬手帳のことを考える上で、2年前の東日本大震災は非常に大きな出来事だと感じています。お薬手帳がなかったために大事な薬が貰えなかったという複数の被災者の発言を見聞きし、薬が飲めない中でよくぞ無事でいられたと思う一方、逆に手帳が無かったために不幸にも命を落としてしまった人もいたのではないかと考えると、とても他人事ではいられなくなりました。
また、被災地支援を行った薬剤師の中には、お薬手帳の普及に尽力している姿も見聞きしましたので、お薬手帳の大事さ、持っていない場合に被るであろう不利益について深く考える機会が増え、自分が担当している患者さんに、こういった不利益は決して経験して欲しくない、とも強く思うようになりました。
12年の調剤報酬改定で薬学管理料の算定要件として必須となり、お薬手帳の携帯率向上に拍車がかかることを大変喜びました。現在、説明時の話法として非難も上がっていますが、「法律」の後ろ盾があると患者さんの受け取り方が変わってきます。いかに役立ち、いかに大事な物かを重ねて説明しても、「面倒くさい」と言われたら今まではそれまででしたが、無理強いしてでも持って頂き、地震などいざという時に不利益を被る事がなければ最悪の事態は防げます。
震災のたびに見直されてきたお薬手帳の大事さですが、薬剤師としてこれらを正しく伝え続ける事で、震災を風化させないための役割を一部担えるのではないかと考えています。
12年の調剤報酬改定以降、お薬手帳は薬局にとって最重要項目の1つであり、力を入れて取り組んできた経緯があります。一部批判の声もないわけではありませんが、より活用することで患者さんの薬物治療に一層貢献できるはずです。そのためにも多くの知恵、様々な工夫を共有してゆくことが必要ではないのかな、と感じました。
今回ご協力いただいた先生方
田中秀和氏(長崎県 あい調剤薬局)
薬局にお薬手帳持参率ボードを掲示し、手帳持参を啓発
原崎大作氏(鹿児島県 アクア薬局)
数年前からお薬手帳の持参率向上を目指して、独自に手帳カバーを作成・印刷
若林進氏(東京都 杏林大学医学部付属病院薬剤部)
自らの実体験を元にお薬手帳カレンダー作成に携わる
○ Facebook「お薬手帳普及委員会」(2011年12月〜)
薬剤師のみならず、医師・看護師などの医療人、デザイン&薬剤機器メーカー、医療メディアなど、医療に携わる様々な業種の人が参加して様々な意見が交わされ、「お薬手帳啓蒙リーフレット」「お薬手帳カレンダー」など手帳普及のために多くの活動を行っている
▽ 違いがわかる!同種・同効薬

21:51
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| ソーシャルPメンター&ニュース(連載終了)
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イオン、医療分野への本格進出
Excerpt: 来るべき「高齢化社会」への対応という切り口で、お薬手帳+αを考えているイオンの戦略です!
Weblog: 医薬・医療マーケティング研究所
Tracked: 2013-04-09 10:30
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イオン、医療分野への本格進出
Excerpt: 来るべき「高齢化社会」への対応という切り口で、お薬手帳+αを考えているイオンの戦略です!
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Tracked: 2013-04-09 10:30
しかし、高齢者はなかなか対応してくれません。
第一、我が家は完璧面の人(門前どころか近くに医療機関がない)なので、家族が取りに来たり、1回家へ帰って自分の空いてる時間に薬取りに来ます。
ゆえに、手帳をわざわざ持って来るのを忘れます。
注意しても2ヶ月とか3ヶ月も経つ(受診間隔)ので覚えていません。
ですからほとんど指導料が取れません。
たまに他科受診がわかって有意義なのはわかりますが、対応するのは薬局だけの問題でなく患者さんの方にもあります。
それなのに手帳を出さないのは薬局の努力が足りない(厚生局に)って言われるのは納得いかないですね。
震災を引き合いに出される方がよくいますが、私が不思議なのは、何故レセプトデーターを見れなかったのか?って事です。
パソコン1台?(スマホでも今時は可能?)用意すれば、それこそ薬だけでなく検査を何をしたかはっきりわかります。
何のためのオンラインデーダーでしょうね?
どこかの研究には使っても肝心な時に何故利用できないんでしょう?
コメントありがとうございます。
確かに持参率に関しては悩ましい部分は少なくないですね。
指導料に関しては、手帳が薬歴管理料に包括になったとは言え、手帳持参なしが直ちに算定不可になるわけではないとの見解があったように思いますが、どうなのでしょうね。
手帳なしでずっと指導料とっていたら結局は初回要らないと言っても毎回?お薬手帳の重要性を説明したのかとか、ちゃんとお薬手帳を持つよう指導すべきとか・・・・・それが薬歴に反映されてないとか・・・・難癖つけてきそうです。
実際医師と連携できて情報が交換し合えると嬉しい事もあります。
義務がいい面もありますが・・・・
手帳の他にも後発推進とか処方箋の有効期間は4日間とか、厚労省は都道府県や医療機関・薬局に指示しただけでいつも終わりやってない我々だけが悪いって言いますけど、こう言うことは薬局の努力だけでなくご自分たち厚労省(行政)もきちんと広報活動して欲しいですね。
遅レスすみません。
厚生局というか、個別指導でのことを想定されているのですよね。
指導官が…というのはよくないのかもしれませんが、立場によって薬局への理解度が異なるのは、仕方ない部分もあるのですかね。