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2006年05月19日

知ってるようで知らないオレンジブック

昨日の記事「ジェネリック医薬品採用マニュアル」で後発医薬品の選択基準を示す本が発売されるということをご紹介しました。オレンジブックよりは役に立つ?などと書きましたが、そうは言っても公的な出版物であるオレンジブックは隅に置けません。

そもそも「オレンジブック」と私たちが呼んでいるものの多くは「オレンジブック総合版」であったり「オレンジブック保険薬局版」のことで、大元のオレンジブックは別にあります。

オレンジブックという名前はアメリカにならってつけられたもので、本当の(?)名前を「医療用医薬品品質情報集」といいます。年に4回のペースで発行されています。平成18年3月にNo.25が出ていますが、それが一番新しいものです。

非常に基本的なことなのですが、オレンジブックの「大元」と「総合版」「保険薬局版」の関係はどうなっているのかと言いますと。

大元のオレンジブックは品目ごとの掲載になっています。即ち、最新刊に全ての医薬品の最新のデータが載っているわけではありません。端的に言えば、品質再評価された医薬品の結果だけがその順に掲載されているこということです。

品質再評価が済んだ順に掲載されるので一覧性は到底なく、例え全部持っていたとしても普段の業務では使い難いこと、この上ないと思います(持っていることが悪いわけではありません、念のため)。

更に品質再評価後に承認された医薬品は、大元のオレンジブックには掲載されません。別の言い方をすると、既にオレンジブックに掲載されている医薬品が申請・認可されても追記されることはない、ということです。

例えを挙げますと。
日研化学のセレニカR錠200mgという医薬品。これは大元のオレンジブックには掲載されていません。しかしセレニカR錠の100mgは掲載されています。

これはどういうことかと言うと、バルプロ酸ナトリウムの品質再評価が行われた2004年2月に、当該医薬品の申請が間に合ったか・間に合わないか、ということを示しています。

簡単に言ってしまえば、セレニカR錠の200mgが後から出てきたために、オレンジブックに載らなかったということですね。
ちなみに、バルプロ酸ナトリウムは医療用医薬品品質情報集 NO.19に掲載されています。

「じゃあセレニカR錠200mgは溶出試験の規格を満たしていないの?」という疑問が当然沸いてきますよね。そんなことはありません。詳しくは後述します。


話が脱線気味ですが、「大元」と「総合版」「保険薬局版」は何が違うのか。

一番は後者には一覧性があるということ。
それから、「大元」に載っていない医薬品でも「総合版」「保険薬局版」には掲載されているということでしょうか。

最後に一つ。「総合版」「保険薬局版」にある記号「公」「承」の示すもの。それぞれ「公示」「承認」を表しているんですが、これらの違いは何か?

参照する上での違いは「なし」としてしまっていいのではないかと思います。先ほどのセレニカR錠の例を出して言うならば、


100mgが「公」=大元オレンジブックの収載に間に合った

200mgが「承」=大元オレンジブックの収載に間に合わなかった


ということで理解していただけると思います。

「公」も「承」も試験規格は全く同一であり、その時期が違うだけだということです。

(参考)
【どうなる?後発品 第6回】「オレンジブック」を読み解く(2)(2006/5/15)

医療用医薬品品質情報集 (オレンジブック) と品質再評価


もし記事中に間違いを見つけたらこっそりメールで教えてください。

この記事へのコメント
勤務医です。保険薬局版を始めて購入したのですが、「公」と「承」の違い、はっきり理解できないでいました。いつも有益な情報をありがとうございます。
Posted by いししのしし at 2006年05月22日 16:13
>いししのしし様
以前も書き込みいただいていますね。ご覧頂きありがとうございます。
文章にするとなるとあやふやな知識も裏を取りながらになりますので、そういった意味では私自身が一番勉強になっているのかもしれません。

Posted by くま☆ at 2006年05月22日 19:20
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