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2006年07月15日

後発品は安いんだから…

月刊ジェネリックという雑誌をご存知でしょうか。今月の特集に「11人の薬剤師・医師が語るジェネリック銘柄選択基準」という記事がありました。

医師、薬剤師、また病院勤務、薬局勤務、それぞれの立場の方にアンケートを取り、それを元に書かれています。その中で特に印象に残った部分について、取り上げてみようと思います。

聖マリアンナ医科大学病院薬剤部長の増原慶壮氏が以前、インタビューに答えていた言葉が引用されていました。

先発品の薬価が現在も高い以上、先発品とジェネリックに情報提供の差があるのは当然。薬剤師側から情報収集のアプローチをしなければならない。(一部抜粋)」


イメージとしてはこんな例えはどうでしょう。
先発品の情報提供はフルコースのレストラン。黙っていても食事の進み具合をみてタイミングよくいろいろな料理が運ばれてくる。シェフやソムリエが都度出てきて食材やワインの解説をしてくれるし、希望の料理も作ってくれる。そのかわり、料金は高い。

後発品の情報提供はバイキング形式のレストラン。料理はそれなりに用意されているけれども、座っているだけでは運ばれてこず、自分で食べたいものをチョイスする。料理の品揃えはそこそこで、時々ないものもあったり、言わないと出してくれなかったり。料金もそれなり。

ここでいう料理ってのは、医薬品ではなくて医薬品「情報」に置き換えた方が適当かもしれませんね。まあ、深く考えると例えとして適当でない部分が出てくるので、あまり突っ込まないでください。


よく「後発品は安いんだから…」ということを言いますが、その最大のメリットである後発品の価格をどう捉えるか。

「安いんだから効くか効かないか分かりませんよ」「安いんだから変なものが入っているかもしれませんよ」というのは患者さんへの転嫁ですよね。高い後発品ならいいのか?という話になってしまいます。

また、後発品メーカーに先発メーカーと同じ対応を求めるのは酷でしょう。情報提供に関わるコストも医薬品の価格に内包されていることを考えると当然です。個人的にも先発品と同じ情報提供の方法は望んでいません。

そこで、私たち薬局の薬剤師が働く余地が出てくるというわけです。薬の情報を提供することでフィーを得ているのですから当然といえば当然です。

「後発医薬品メーカーは情報提供体制がなっていない」というのは簡単です。しかしそれでは「待ち」の姿勢は変わりません。薬剤師が自らすすんで行うことが求められます。


最後に。
昨日の記事ではありませんが、政田先生の言葉をお借りして表してみます。

「国が認めているから同じですと話すのでは、逃げている薬剤師」

であるならば、

「現行の制度下で後発品は勧められませんと話すのでは、逃げている薬剤師」

と言うことができます。
本質として大切なのは「外部依存せず、能動的に同異を見極める」といったところでしょうか。

この記事へのコメント
老人としては、個別的な違いを観察して、考察して、アドバイスをくださる薬剤師を望みます。
医師は、病を診ても 化学物質の個別的な反応性を観察する能力はありませんからね。
個々の薬の情報だけではなくて、科学の基礎を常にリニューアルしている薬剤師には、思わず「先生」と呼ばせていただきます。
個々の薬の情報の説明が最新のサイエンスとリンクしているからです。
今の命のレベルによっては、ジェネリックでも充分な方もいれば、今の命の状況では、予測できないくらいの不安があるからジェネリックでは安心できない方もいることでしょう。
それでも、年金暮しには、10円の違いが大きいことを理解して欲しいものです。
先の無い命には、フルコースを食べる力が無いのです。山盛りの情報も重たいだけです。
ニーズを拾ってくださいな。
ニーズを受け入れてくださいな。
叶わぬ夢を教えてくださいな。
(我が家の長老からの意見です)
Posted by はなくり at 2006年07月17日 07:35
はじめまして。
話題から少しずれますが、以前から少し疑問に思っていたことがあります。もしよろしければ、薬剤師の先生のお立場から教えて頂ければ幸いです。
ジェネリックへの流れは、日本だけではなく世界的にも大きく、避けられないものと思います。同じ効果で(多少違う場合もある可能性がある?)少しでも安い薬があると、国や保険者だけでなく、患者さんにも良いことだと思います。
しかし、世間の様子を見ていると、安いことにのみ拘っているようでならないのです。
聞く所によると、先発品を作るのには、膨大なコストとリスクが掛かるようです。このままジェネリックへの流れが必要以上に加速してしまうと、新薬の開発に影響が出ないのでしょうか? 世界中で新たな感染症など多くの新しい疾患や、効果のある薬が存在しない疾患など、新薬の開発が必要とされる場面は、これからはむしろ増えるのではないかと思います。
ジェネリックの効果云々とか、費用云々とかも大切ですが、将来のことも考える必要があるような気がしてならないのです。
先発品の薬メーカーが、必要以上に儲けすぎるのは困りますが、新薬の開発費が出なくなるようでも困ると思うんです。それとも、このままジェネリックのシェアが増えても大丈夫なんでしょうか?
Posted by きよし at 2006年07月17日 22:56
国内・国外メーカーを問わないなら、先発メーカーの存続は当然ですが問題ないでしょうし、研究開発だってしかりかと。
とはいえやっぱり、自分たちの飲む薬なんだから、自分たちの国のメーカーにも作っていて貰いたい!と個人的には思うところです。

ただし、製薬会社は株式会社ですからね。
儲けが薄くなるってことは株価が下がるってことで、それは、国内メーカーから見れば、外資に買収される危険性が出てしまうわけですよね。

これまで日本のメーカーは、国内のシェアだけでも十分完結できるくらいに業界自体が守られていたこともあって、世界の製薬業界の「メガ志向」の流れから見るとちょいと乗り遅れていた感があったわけですけど、第一と三共の合併に代表されるような一発逆転の手を打ってきた。面白い。

ただ、逆に言えば、そうして資本を拡大していかないと、これからは海外のメーカーに太刀打ちできないっていうことですよね。

で、その弊害としては、業界のリストラによって企業の多様性が失われてしまい、儲けが出るところにはより開発資本が投じられ、そうじゃないところは薄くなるってことになりますわね。

それが実際に新薬の研究開発現場にどのような影響を与え、更に医療の質にどういう影響を与えるかというのは、しばらく時間が経たないとわからないですよね。

後発品の個人的な展望(というか願望?)としましては、合併により膨れ上がった先発メーカーが、シェアを求めてジェネリック部門を社内に持ち、「自社後発品」も含めて、ガンガンジェネリック業界に進出してくるなんていうのはどうかなーと。

先発メーカーとしては、他社の後発品にシェアを奪われるくらいなら、利鞘は大幅ダウンでもかなりマシ?(メリットは、生産ラインを変える必要がないこと)
私達医療従事者としましては、品質も作用も、安心して使える後発品が手に入る!

あーでも、そのためには後発品がもっと市場に浸透してこないといけないから・・・
安心して使えるものを得るために安心して使えないものを沢山使う必要があるっていうのは、逆説的ですかね(苦笑)

どうせ、先発メーカー同士の間では慣れ合い的な関係があって、積極的には動かないだろうしなぁ。
「お互い、ゾロ新は作っても、ゾロは作らないってことで!」
みたいな(笑)

かと言って外資に期待するのは、ちょっと癪だし。
やっぱ制度でなんとかしないとダメですか?
Posted by さつき at 2006年07月18日 01:41
>はなくり様
飲んでいる薬も、置かれている状況も正に十人十色。似ている人はいても個々の要望も含めれば同じということはあり得ません。

目の前の患者さん、医薬品をきちんと判断評価することが大切だと痛感いたします。

>きよし様
コメントありがとうございます。ジェネリックの拡大による新薬メーカーへの影響ですね。

仰るようにジェネリック使用によって先発メーカーの開発力が低下する、という危惧をお持ちの方はいらっしゃるようです。医師でも「国内新薬メーカーのために」と後発品使用に消極姿勢を示す方もいます。

具体的根拠に乏しいのですが、そういった心配はあまり必要ないかと思います。現にここ何年も新薬を出していない先発メーカーも、特に危ないという話は聞かないですし。

それよりも後発医薬品を社会的公共財として、広く使用していくことの方が必要だと感じています。

>さつき様
先発メーカーによる後発医薬品、今後進んで行きますよね。先日ファイザーのMR氏にお伺いしたところ、ノルバスクの後発品は作らないけれども他の品目は系列子会社にて製造するという話を聞きました。

あ、ファイザーは外資ですが…(苦笑

仰るように競争しているようでしていないのが製薬メーカーです、先発も後発も含めて。規制のある(規制に守られている?)業界ですので、ある程度は仕方ないのかもしれません。

しかし世界に目を向けたらそんなことは言ってられないですし、そろそろ本気で仕掛けないとつぶれますよね。個人的には国内メーカーにもっと頑張ってもらいたいと思っています。
Posted by くま☆ at 2006年07月19日 10:47
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