麻薬を取り扱う薬局というのは実際どのくらいの数になるのか、正確な数字は全くもって分かりません。お読みいただいている方の中で、麻薬処方箋を取り扱ったことがある人はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
麻薬処方箋が通常の処方箋と違うところは、
患者の住所
麻薬施用者の免許証番号
が記載されていなければならない、という点です。処方箋に麻薬が記載されていれば、ただちにこの2点を確認する程度のことは、現場で働く薬剤師であれば「常識」の範囲に入ります。
では、前者の「患者の住所」ですが、これについてはどこまでしっかり確認を行うでしょうか。当該患者の薬歴に控えてある住所、あるいは記載してもらった初回アンケート等と照合を行なっている薬局って、どの程度ありますかね。
そういった部分まで、薬局として業務手順に組み込んでいる薬局があれば、それは素晴らしいことだと思います。では、実際はどうでしょうか。
多くの薬局では、麻薬処方箋に記載された患者住所について、そこに本当に住んでいるのかどうかの確認は行なっていないのではないでしょうか。あ、これは私のまったくの個人的推測ですよ、もちろん。
誤解のないように最初に申しますと、決して批判が目的ではありません。処方箋に記載された患者住所は正しいという前提で見ており、なかなかそこまでできないのが現実ではないでしょうかね。
ちょっと話題に上ったのですが、例えば、施設に入っている人。あるいは、単身赴任をしている人。こうした人では、自治体に届け出てある住所と、実際に住んでいる住所が違うケースがかなりあるのではないかと思います。
こういうケースにおいては、届出の場所、実際に住んでいる場所、どちらを「住所」とするのがよいのでしょう。
Wikipediaに「住所」についての記載がありました。
住所 – Wikipedia
必要部分を引用しますが、
住所決定についての各国の立法例としては、各人の実質的な生活場所を住所とする実質主義と形式的な基準で住所を決定する形式主義があり、日本の民法は「各人の生活の本拠をその者の住所とする」(民法第22条)として実質主義を採用している
ということであり、日本において「住所」というのは生活の本拠、つまり実際に住んでいる場所を住所とすることになっていますね。
ただ、医療機関においての住所確認は保険証が中心になるでしょうから、届出されている住所が申告されるケース(形式主義)が多そうです。となると、麻薬処方箋もそれを元に作成されますから、当然その「届出上の住所」が記載されることになります。
そして再度Wikipediaからの引用ですが、
住所につき実質主義をとる場合、生活の本拠は定住事実のみで足りるとする客観説と、定住事実のほか定住意思が必要であるとする主観説の対立がある
の部分が、話をややこしくしています。つまり、仮に実質主義で実際の住まいを住所として処方箋に記載したとしても、定住意思が確認できなければ「住所」とみなされないケースが出てこないとも限らない、というわけです。
定住意思が確認できない例としてすぐに思いつくのが、痴呆の患者さんです。周囲の配慮から施設に入居し、実質的にそこに住んでいるとしても「家に帰りたい」としきりに訴えるようであれば、到底定住意思があるとはみなされません。
さて、ちょっと話を戻しますが、そもそもなぜ麻薬処方箋に患者住所の記載が必要なのかを考えてみたいと思います。これはもっともシンプルにトレーサビリティの問題ではないかと考えます。
そう考えると、やはり麻薬処方箋に記載されるべきは「生活の拠点」の方が、しっくりくる感じです。届出上の住所では、トレーサビリティの役割を果たそうと思うには不十分だからです。
現状、大きな事故が起こっていないので、麻薬処方箋の患者住所欄には「とりあえずそれらしい住所が入っている」として、厳密にチェックしなくてもトラブルにはなっていませんが、本当にそこに居住の実態があるのか、その辺りの照合という話が、今後出てこないとも限りませんね。

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