薬局のDX(デジタルトランスフォーメーション)やペーパーレス化が叫ばれて久しい昨今。皆さまの薬局でも、紙での初回アンケートをデジタルに移行しようと検討している、あるいはすでに移行したというところも多いのではないでしょうか。
最近のトレンドを見ていると、「初回アンケートからその後のフォローアップまで、すべてLINE公式アカウントで完結させましょう!」というシステムや営業案内をよく目にします。確かに、LINEは日本人のインフラとも言えるアプリですし、薬局側からすれば非常に魅力的なツールに見えます。
しかし、私の薬局では、初回アンケートの入り口として「LINE」をあえて採用しませんでした。選んだのは、ごくごく一般的な「Googleフォーム」です。なぜ、流行りのLINE連携システムを使わなかったのか。そこには、薬局という空間における患者さんの「リアルな心理」と、薬局側の「本当の狙い」の間に大きな乖離があったからです。
今回は、私が実際にやってみた中から、患者さんに嫌がられないデジタル化の最適解と、その具体的な仕組み作りについてお伝えします。
患者さんは、いきなりLINEを教えたくない
初回利用の患者さんが薬局にやってくるとき、どんな心理状態でしょうか。体調が悪くて辛い、早く薬をもらって帰りたい、あるいは「初めての薬局で少し緊張している」状態です。
そんな時、受付で「こちらのQRコードを読み込んで、まずは当薬局のLINE公式アカウントを『お友達登録』してください。そのあとにトーク画面から問診に答えてくださいね」と言われたらどう感じるでしょうか。
私自身も飲食店や小売店を利用することがありますので、そうした際、LINEの利用を勧められたら…。一人の利用者・消費者として考えたとき、心理的な抵抗感、つまり「心理的ハードル」が非常に高いことに気づきました。
「ただ薬をもらいたいだけなのに、なんでプライベートなLINEを教えなきゃいけないの?」「登録したら、あとから不要なダイレクトメッセージ(DM)や通知がたくさん来るんじゃないの?」「個人情報がどう扱われるのか、なんだか気持ち悪い」
これが、患者さんの偽らざる本音です。もちろん、薬局側から「通知はオフにできますよ」と説明したとしても、最初の「登録ボタンを押す」という行為自体に警戒心を抱かせてしまうことには変わりありません。
中には、よくわからないシステム連携の同意画面(緑色のチェック画面)が出てきて、「面倒くさいからやっぱり紙でいいです」と離脱してしまう高齢の方もいるでしょう。これでは本末転倒です。
数だけの「お友達」に価値はない
一方で、薬局側の本音(都合)も痛いほどわかります。調剤報酬改定の流れを見ても、服薬期間中のフォローアップはもはや必須の業務です。電話をしてもなかなか出てもらえない現代において、患者さんと継続的に連絡が取れるLINEは、喉から手が出るほど欲しいコミュニケーションツールです。
だからこそ、システムベンダーは「初回アンケートをフックにして、強引にでもまずはLINEの友だち登録をさせましょう」と提案してくるところもあるでしょう。
しかし、ここで立ち止まって考える必要があります。「初回アンケートに答えるため」という、ある意味で強制的な理由で集めたLINEの友だち数に、果たしてどれだけの意味があるのでしょうか。
薬局の本当の目的は「LINEの友だち数を増やすこと」ではありません。「適切なタイミングで服薬フォローアップを行える環境を整え、次回の処方箋送信や健康相談につなげること」です。
無理やり登録させられた患者さんは、薬局を出た瞬間にブロックします。あるいは、通知を完全にミュートにして二度と開かないでしょう。ブロック率が50%を超えるようなアカウントで、いくら「友だち登録者数1000人突破!」と喜んでみても、現場のフォローアップ業務にはまったく繋がりません。数だけ増えても、本当に意味がないのです。
患者さんの利便性や心理的平穏を無視して、薬局の都合だけでLINE登録を強要する。これは長期的には患者満足度を下げ、患者離れを引き起こす要因になりかねないと私は考えました。
では、患者さんの心理的ハードルを極限まで下げつつ、薬局の真の目的である、質の高いLINE友だち、つまりブロックされず、患者さんとの関係性が保てるLINE登録のためにはどうすればいいのか。
ただアンケートを取るだけなら紙でもいい。でもデータ化はしたい。そして、あわよくばLINEにも登録してほしい。
このジレンマを解決するために私が行き着いたのが、「入り口と出口を完全に分離する」という手法でした。ここからは、私が実際に薬局で運用している「Googleフォーム」を使った具体的な設定手順と、患者さんが思わずLINE登録したくなる導線設計について書いていきます。






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