医師の北原茂実氏が著した「「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!」。誤解を承知で、氏の主張を箇条書きにしますと、
国民皆保険の全廃
医療の産業化
総医療費を増やす
医療を輸出産業として外貨獲得
といった辺りでしょうか。
医療費を増大させるという主張は目新しいものではないのですが、そのベースとして、とかく「日本の医療は世界の他の国々と比べて低いから」というのが根拠になりがちです。
しかし、氏の主張は単にそれだけに依存するのではなく、硬直した日本の医療制度=国民皆保険制度の問題点と絡めて展開されてゆきます。
その国民皆保険制度についても、単に否定するのではなく、戦後復興期から高度成長期まで重要な役割を担ってきたことを認めつつ、運用の誤りもあって制度疲弊を起こしているため、新たな制度の導入を提案しています。
医療を産業として捉えることについては、常に賛否両論がありますね。そんな中、特に私が斬新だと感じたのは、医療を「金を食うお荷物」として扱うのではなく、「35兆円の巨大産業」として捉える部分です。
発想の転換、着眼点を変える、正によい例だと思うのですが、例えばある産業の規模が大きくなることを悲観視する人は、あまりいませんよね。むしろ「右肩上がり」を喜ぶことの方が多いのではないかと思います。
「医療は利益を追求してはいけない」「医療でお金儲けをすることは悪だ」という主張が支配的な現在の医療の世界において、氏の主張は突飛なものに聞こえるかもしれませんが、個人的には賛同する部分が多いです。
よく私たちの業界で話題になるのは「株式会社が薬局をやっていること」で、時に問題とされますが、これも考え方次第では、非常に可能性のあるものになりますよね。
「”医療”と”利益”は相反するものだ」というこれまでの常識を打破することこそ、私たちに必要なことなのではないかな、というのが読後の感想です。
▽ 「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! (講談社プラスアルファ新書)



コメント
医療の産業化が可能なのは、医療に人的な余力があるのであれば、という前提が不可欠ではないでしょうか?
日本の医療が先に果たすべき役割は、インフラとしての、公共の医療です。
この役割を果たすだけでいまギリギリ、ちょっと足りないマンパワーでやっているのに、自由診療の割合を大幅に大きくするための医師看護師がどこにいるのかと私は疑問なのですが、いかがでしょうか。
>ましまし様
コメントありがとうございます。
著書では産業化=自由診療を示すわけではないですよね。つまり著者の北原氏は、自由診療の割合を大きくしようと主張しているわけではありません。
その辺り、私の紹介が端的過ぎたのでしたらお詫びいたします。が、ぜひ一読されることをオススメします。